新型コロナワクチン接種をどうする?リウマチ膠原病の患者さんに-ヨーロッパリウマチ協会のViewpointから-このページを印刷する - 新型コロナワクチン接種をどうする?リウマチ膠原病の患者さんに-ヨーロッパリウマチ協会のViewpointから-

新型コロナウイルス感染症(感染症としての名前はCOVID-19、ウイルスとしての名前はSARS-CoV-2)は、私たちの生活をすっかり変えてしまいました。当面のところ、われわれは、この感染症と共存することを前提として生活を組み立てていかなければなりません。

この感染症への対策として、3密を避ける、手洗い、マスクなどの予防策が最も重要なのは言うまでもありません。ただし、社会生活の様々な局面をすべてカバーするとなると、それだけでは不十分でしょう。どの人にも、新型コロナウイルス感染症を発症してしまうリスクが存在します。治療薬の開発にまだ時間がかかりそうな現状としては、ワクチンに期待せざるを得ません。

ワクチンに関しては、医療従事者から投与が始まり、高齢者への投与が始まりつつあります(この原稿の作成時期は2021年4月初めです)。ようやくわが国でもと歓迎している私ですが、最近、患者さんを診察していて、予想以上にワクチン接種に対して皆さんが消極的であることに気づかされ、驚いています。

どのような経路で皆さんが情報を入手し、消極的な印象を持たれたかについては、ケースバイケースだと思われますが、私としては、中立的な意見を発信する必要があるのではないかと思うようになりました。内容としては、私個人の意見では不適当ですので、何か権威のある機関が発表したもので、かつ皆さんが知りたい具体的な内容に踏み込んだものがよいだろうと考えました。

そこで、適当だと思われたのが、EULAR(ヨーロッパリウマチ協会)のSARS-Cov-2ワクチン接種に関するViewpointです(annrheumdis-2020-219773)。Bijlsma先生の執筆です。リウマチ膠原病患者に関して、SARS-Cov-2ワクチン接種の疑問点とその回答が要領よく記載されています。

今回は、その内容を紹介させていただこうと思います。私の個人訳、しかも簡略化した抄訳ですので、誤解を招くのではと心配ではありますが、臆せずに記していきましょう。

  • 「ワクチンをうつ必要がありますか」

    どの人でもワクチンをうつのが賢明です
    (筆者注:驚かれたかもしれませんが、よほどのリスクがないかぎり、ワクチン接種の有用性が優るという意味でしょう)
  • 「ワクチンをうつのを急ぐべきですか」

    現時点では、高齢者・介護施設のスタッフが優先でしょう
  • 「どのワクチンが一番いいのですか」

    わかりませんが、どのワクチンでも、ワクチンをうたないより良いでしょう
  • 「すでに新型コロナにかかりましたけれど、ワクチンは必要ですか」

    ワクチンは安全でもありますし、さらにかかりにくくなることが期待できるでしょう
  • 「抗リウマチ薬や免疫抑制剤を使っていますけど、ワクチンをうってよいですか」

    うってください。ただし、リツキシマブ(筆者注:わが国での商品名はリツキサン®)を使っているときは、投与タイミングを考慮します
  • 「ワクチンは、私が使っている薬と相互作用がありますか」

    ありません
  • 「誰に相談したらよいのですか。かかりつけ医ですか、リウマチ科医ですか」

    特別な疑問がある場合は、リウマチ科医に相談してください
  • 「ワクチンをうつかどうかは、どのようなことを基準に考えたらよいのですか」

    あなたの病気の勢い、治療の内容、合併症などです
  • 「ワクチンの副作用はどうですか」

    少なくともこれまでの経験では、安全で、インフルエンザワクチンと遜色ありません
  • 「現在、膠原病が悪化している状態ですが、ワクチンをうってよいですか」

    リウマチ科医に相談してください
  • 「ワクチンの副作用が心配です」

    心配する必要はないと思われますが、リウマチ科医に相談してください
  • 「ワクチンを打つことで、膠原病が悪くなりませんか」
    あまりないと思いますが、まだ十分な知見がありません
    (筆者注:ワクチン接種による膠原病の増悪のリスクは、ないとはいえません。増悪のリスクを避けるためにも、ワクチン接種に伴って治療薬の中止や減量は行わないほうがよいだろう、と本文の他の場所に記載されています)
  • 「ワクチンは、これから毎年のようにうたなければならないのでしょうか」

    はっきりしませんが、おそらくそうだと思われます
  • 「ワクチンは、長期的な影響が体にあるのでしょうか」

    まだわかりませんが、現在使われているワクチンは、安全だと思われます
  • 「リウマチ膠原病だと、新型コロナにかかりやすいのでしょうか」

    これまでに、かかりやすいという報告はありません
  • 「リウマチ膠原病だと、新型コロナにかかったら、重症化しやすいのでしょうか」

    リウマチ膠原病自体では重症化しやすいということはありませんが、病気による
    臓器障害がある場合は、一般のかたと同じように、重症化のリスクがあります
  • 「私が使っている薬は、新型コロナの病状を悪化させないでしょうか」

    ほとんどのリウマチ膠原病の薬は、病状を悪化させることはありません
    現時点では、プレドニゾロン換算で1日10㎎以上のステロイド剤、またはリツキシマブ使用の患者さんは悪化と関係するかもしれないということが報告されているだけです
    (筆者注:新型コロナウイルス感染症の発症を確認した後で、治療薬の調整をすることは通常の対応として行われています)

いかがでしたでしょうか。新型コロナ感染症で日本以上に深刻な影響を受けている、ヨーロッパからの発信です。私も同じ意見です。
本記事が、新型コロナワクチン接種に不安を持っていらっしゃるリウマチ膠原病患者さんのご参考になれば幸いです。

国立病院機構 宇多野病院
統括診療部長
リウマチ膠原病内科   柳田 英寿