筋ジストロフィーのしくみこのページを印刷する - 筋ジストロフィーのしくみ

筋ジストロフィーのしくみ

ところで筋肉細胞は収縮を繰り返す動きの激しい細胞です。その細胞膜は脂質でできた弱い膜のため外側と内側から丈夫な層にはさまれています。

外側にあるのが基底膜、内側にあるのが細胞骨格です。これらの膜をつなぎ止めるのがジストロフィン軸とよばれるものです。これがホッチキスのように基底膜,細胞膜,細胞骨格を連結しています。

ジストロフィン軸

ジストロフィン軸をさらにくわしく見るといろいろなタンパク質が組み合わさっています。その中で筋疾患と関連する主な成分はジストロフィン、サルコグリカン、ラミニン2などです。

これらの成分はからだの中で作られて組み立てられるわけですが、作られるための設計図が遺伝子です。

たとえばジストロフィンを作るためのジストロフィン遺伝子を人間は持っています。親から子へ遺伝子はコピーされ引き継がれていきますが、人間の膨大な遺伝子のコピー中にはミスも生じてきます。その結果十分に機能しない(うまく組み立てられない)成分が作られてきます。

ジストロフィン

ジストロフィン軸がうまく機能しないと筋肉細胞は壊れやすくなります。筋肉細胞が収縮するとき細胞膜は膨らむように変形します。

このとき基底膜や細胞骨格に支えられないと細胞膜は傷みやすくなります。細胞の外からいろんな物質が入り込んだり逆に細胞の中の物質が流れ出したりします。流れ出す物質の代表はクレアチンカイネースでCKとかCPKと略されてこの物質の血液中の量を計ることで筋肉の傷み具合の指標に使います。

流れ込んでくる物質の中で筋肉の障害すると疑われているのはカルシウムです。カルシウムは筋肉細胞の中で収縮を伝える信号の役目を果たしていますが、このときカルシウムの量は細胞の中で厳密に調整されています。しかし大量のカルシウムが細胞の外から流れ込んでくると調整機構が追いつきません。そしてタンパク分解酵素など細胞の成分をいためるような働きをする物質がカルシウムによって働き始めます。

筋肉の収縮
タンパク分解酵素などを活性化

この状態が長期間続くと筋肉の細胞は徐々に変性し、死んでいくと考えられています。細胞が死んだ後は新しい筋肉細胞が出てきたり、脂肪や線維で置き換えられます。

成長期には筋肉細胞の再生も盛んですが、年令が進むと変性していく筋肉細胞の数が多くなってきます。筋肉は徐々に萎縮したり、変性し、筋力が低下していきます。これが筋ジストロフィーです。健康なヒトの筋肉の断面を見ると大きさのそろった筋肉細胞がぎっしり詰まっています。

筋肉細胞