あなたを育てる(人材育成への思い)このページを印刷する - あなたを育てる(人材育成への思い)

人材育成について話し合いました

人材育成について話し合いました
当看護部の理念は、人間愛を基本として患者さんの人権を護り、豊かで充実した日々が送れるよう、患者さんと「共に」歩む看護を目指すということ。
これが実現できる人材を育てることが私たちの務めですが、今日はその人材育成について思うことを話し合いたいと思います。

あきらめない看護を実践するために

筋ジス病棟では、患者さんの求めていることを正確に察したり、感じたり出来ることが筋ジス看護の専門性だと感じます。それを高めるのは、時間的な経験ではなく、患者さんに深い関心を寄せて関わりながら感性を養う経験ではないでしょうか。
また、もしも「食事を食べるのは危険なので、今日は口から食べるのを諦めよう」としたら、その患者さんにとっては前日の食事が一生の中で最後の食事になってしまう。そう思えば、どうしたら今日も安全に食事が食べられるだろう?と自然に考えるようになるはずです。そんな風に、患者さんの思いに寄り添うことで、当院が目指すあきらめない看護につながっていくのだと思います。

神経難病の患者さんは、獲得した力がどんどん奪われていくわけですが、病状が進行しても、「口腔からの飲食や排泄の自立などの力を最後まで残せるように関わりたい」と思える感性を養いたいと考えています。そのためには「この患者さんにどうあってほしいのか?」「そのために看護は何が出来るのか?」を絶えず私たちが問い続ける必要があるのではないでしょうか。看護師自身も患者さんと同じ人として、同じ目線で考えられるように刺激を与えていくことが大切だと思います。

自分のことが出来なくなっていく患者さんの思いを、人として理解できる感受性を養うことが重要であり、そのためには患者さんと深く接し、小さな変化を感じ取って行動に移す経験の積み重ねが大切ではないではないでしょうか。
「これでいいの?」と思ったり「こうした方がいいのでは?」と思った時には、躊躇せずに発信する力を育てることも重要だと思います。

学びを力に変えるには師長の介入が必要

学びを力に変えるには師長の介入が必要
そのためには、師長が実践の場を見ることが大切ですよね・・・。看護の場面を見たり、患者さんと会話をしながら、良かったことは全体にフィードバックするのが私たち師長の務めだと思います。そうすることで次につながり、全体の看護の質が高まるような関わりをしていきたいと考えています。そうしてスタッフが育っていく過程を見るのが師長のよろこびであり、育ったと感じる場面を見たら嬉しくて、また全体に伝えてやりたくなる。そんな好循環を生み出すことが人を育てるということではないでしょうか。
中央の教育では、五感を使って声なき声を聴くという集合研修を取り入れていますが、研修が終わってから、現場に戻って対象理解ノートを使い、一生懸命患者さんの声を聴こうとしている姿を見ると嬉しくなります。
研修がゴールではなく、研修を現場の看護につなげて実践している姿を見ると嬉しいし、それは師長さん方のサポートのおかげだと感謝しています。研修のゴールは、研修内容を実践できるようになることですから。

先日、急変の場面で2年目の看護師が心マッサージを実践して蘇生できた事例があったのですが、研修で学んだBLSが実践で使って初めて自分の技術になることを実感したようです。そんな実感が研修への意欲とその後の経験へのモチベーションになるのでしょうね。

嬉しいことばかりではなく、エラーの場面では、なぜ研修が活きなかったのか・・・と残念に思うこともあります。研修を実践につなげるには、中央の研修の内容を共有し、現場で場面を見せて、実践できる環境を整えるよう師長の介入も大切になると思います。

師長はスタッフの変化に気づける感性が必要

師長はスタッフの変化に気づける感性が必要
訪問看護には、病棟で育った人たちがやってきます。そしてひとりで自宅に伺い、看護を実践するわけですが、訪問看護には、宇多野の看護が集約されていると思います。
訪問看護は、1対1で患者さんに関わり「本当の看護ってどうだったか?」を再確認できる場所であり、訪問看護の体験を積極的に受け入れることで、病棟のスタッフの教育にも役立ちたいと考えています。

成功体験も大切ですよね。外来や手術室は患者さんとゆっくり関わる部署ではないですが、外来では小さな変化に気づいて声をかけ、そんなやり取りから患者さんに肯定的な言葉をかけていただきやりがいにつなげたり、手術室では専門性を感じる直接介助から実践を始めて「出来た」という体験をつくったりして、意欲をそがない工夫をしています。
また、子育て中のスタッフが多いので、スタッフの家庭環境も把握して、子育てしながら仕事ができるようサポートすることが、意欲をそがずに成長できる支援のひとつだと思います。

人材育成の過程では、女性のライフイベントを支えるのも師長の役割ではないでしょうか。家庭と仕事を両立させるためにはサポートが必要ですが、サポートをうまく利用して、家庭を整えることがいい看護につながると考えています。人生の先輩として、スタッフの家庭環境にも目を向けて、生活を整える支援も私は心がけています。

師長は、スタッフの小さな変化に気づいて声をかけていくことが大切ですね。そう考えると看護と同じ。師長が5感を使ってスタッフの変化に気づき、支援が必要なら手を差し伸べる、成長を感じたら賞賛するということを繰り返して、人材は育っていくのですね。

専門性を実感しながら「宇多野の看護」を紡ぐ

また、日々当たり前になっているので気づかない専門性、たとえば呼吸器をつけながら入浴や食事を介助するって本当はとても専門性の高い看護です。でも当院にとっては日常なので、大きなことをしていると気付かなくなっているかもしれません。今一度、自分たちの看護の専門性を振り返り、誇りの醸成と共に自己研鑽しようという意欲につなげることが必要ではないでしょうか。

今日のテーマは人材育成ということでしたが、人を育てる時に「教えなければならない」と構えるのではなく、共に看護の場面を共有し、その時感じたことを言葉にして伝え、感性を研ぎ澄ませて患者さんに関わるように仕向けると、人は自然に育っていくのではないでしょうか。今日、自らが口にした「患者さんを大切に思う心を」スタッフに求めるのと同じように、師長はスタッフを大切に思うことが求められるのだと思います。
師長がスタッフを大切にしたら、スタッフは患者さんを大切にするのだと信じ、今日話し合ったことを心に留めて、今日、ここに集まったメンバーが一丸となって人材育成に取り組みながら「宇多野の看護」を紡いでいきましょう。