ナースのストーリー01このページを印刷する - ナースのストーリー01

自宅でお世話を受けた訪問看護師さんに憧れて

訪問看護師

訪問看護師
10年間寝たきりだった同居の祖母は、ずっと訪問看護師さんのお世話になっていました。まだ小学生から中学生の私でしたが、何かあるとすぐに駆けつけてくれる看護師さんを家族が頼りにしていると感じ、心強い看護師さんの存在が、私の中でいつしか憧れに変わっていきました。
訪問看護師さんへの憧れを胸に、高校卒業後は当院附属の看護学校に入学し、臨地実習の大半は当院で学びました。実習中のことですが、寝たきりの患者さんが「空が見たい」とおっしゃいました。看護師さんに相談したところ「それじゃストレッチャーで散歩に行こう」と言ってくれたのです。ストレッチャーに乗ってお庭で日差しを全身に浴びた患者さんは、涙を流して喜んでくださいました。こんな風に宇多野病院の看護師さんからは患者さんの想いを大切に看護されていることが伝わってきて、実習を重ねるうちに「私もここで看護師になりたい」と思うようになったのです。

患者さんから人生観を学びながら日々成長

私は訪問看護師になりたいという希望を持っていましたが、ひとりで患者さんのお宅に伺って看護をするには判断力が求められ、知識や技術が未熟では務まりません。だから病院で経験を積んで訪問看護師に必要な力をつけたいと考え、当院に就職しようと決めました。
新卒で就職するという視点でみた「当院のいいところ」は卒後教育の充実でしょうか。当院の研修では看護の基礎となる部分を丁寧に学ぶことができ、看護師としての土台が築けた気がします。
神経難病の患者さんは有効な治療法がなく、発病したら絶望の淵に立たされます。そんな方が、自分が生きる意味を見出して前に向けるようサポートするのはとても難しいと感じています。進行性の病気と向き合い、一日一日を大切に過ごす患者さんを通して様々な人生観を学び、私も日々成長させていただいていると思います。元々訪問看護をしたいと思いつつ自信がなかった私でしたが、そんな私に「勉強しておいで」と上司が背中を押してくださり、病棟で7年の経験を積んで訪問看護師になりました。

患者さん一人ひとりと向き合って共に歩んでいきたい

在宅で療養する患者さんとかかわるようになり「看護は生活そのものを支えることだ」と実感するようになりました。病棟にいるときも生活を支えるのが看護だと頭で理解し、病院と外をつなぐ役割をしていたつもりでしたが、自宅で暮らす人たちのことを充分わかって援助はできていなかったと今は思います。
訪問看護で出会った患者さんとのエピソードですが、その方はALSで手足が全く動かない70代の女性です。少しでも患者さんの役に立ちたいと思った私は、何かしたいことはないかを尋ねました。するとその方は「子どもたちに自分の気持ちを手紙に残したい」とのこと。それなら私が代筆者になって手紙を書きましょうと提案しました。手紙には、今までの思い出や家族に対する感謝の気持ちが綴られて、とても重みのあるものになりました。書き終えてから「手が動かなくなってから伝えたいことを手紙に残すなんて無理だと諦めていた」といってとても感謝をされた患者さん。そのとき患者さんの想いに触れることが出来、その想いに寄り添い、残存機能を生かしながら「出来ることは何か?」を常に考えて看護をしようと誓いました。
その人の人生にかかわるのが看護です。そんな看護師として、感受性豊かに、大きな視野で物事を考えられるように、これからも患者さん一人ひとりと向き合って共に歩んでいきたいと思います。