レミケード点滴静注用100このページを印刷する - レミケード点滴静注用100

関節リウマチ患者さんの関節の中では、さまざまの細胞が活性化しています。この、活性化によって、関節が破壊されていきます。
従来から、これらの細胞の活性化を抑える療法が検討されてきました。その代表的なものが、ステロイド・抗リウマチ薬・免疫抑制剤です。しかし、これらの薬剤では十分に効果の得られない患者さんも多く、治療法の進歩が期待されてきました。

レミケードは、TNFαという物質を阻害することで、従来より、格段に優れて細胞の活性化を抑える薬剤です。この薬剤は、1998年に米国、1999年に英国など15カ国で承認され、すでに世界70ヶ国以上で幅広く使われ、高い有効性が確認されています。

基本的には安全な薬剤ですが、場合によっては、重症の副作用をおこす場合があります。この薬剤を安全に使用していくために注意すべき点についてご説明いたします。

効能・効果

関節リウマチの患者さんで、従来の治療で効果が不十分な場合に限られます。

日本での治験の結果

従来使用できる抗リウマチ薬で最も効果の高いものはメソトレキセートでした。 このメソトレキセート(リウマトレックス)を使っても効果が不十分な患者さんでレミケードを追加使用したところ、14週間後にリウマチが軽くなった(症状・検査値の20%以上の改善)人の割合は、61.2%にも上りました。

また、レミケード使用により、関節の骨の破壊が抑えられることが、レントゲン検査で確認されました。(Sharpスコアで4.0の悪化に対して0.5) 海外では、関節破壊が軽度の場合ですが、破壊された骨の一部が再生された例も報告されています。

注意

この薬剤は、原則としては、すでに破壊されてしまった関節組織(軟骨・骨など)を再生するものではありません。あくまで、進行を遅らせるための薬剤であって、完治させるものではありません

用法・用量

  • 1回につき、体重1Kg当たり3mgを点滴静注します。(例:体重50Kgの人なら150mg)
    点滴の実際:レミケードの適当量を250ml以上の生理食塩水で薄めて、フィルター付きの点滴用ラインで、2時間以上かけて点滴を行います。
  • 第1回の点滴の後は、2週間後、6週間後に点滴を行い、その後は8週間ごとに点滴を行います。
    (当院では、原則として2回目までは入院でおこないます。)
  • レミケードは、リウマトレックスまたはメソトレキセートを服用中の人にしか、使用できません。
    これらの薬を服用していないと、レミケード使用に伴い、レミケードに対する「抗体」ができやすくなります。
    「抗体」ができると、レミケードの効果が弱まったり、アレルギーの副作用が起こりやすくなります。
  • 原則としては、現在服用している薬を継続したまま、レミケードを使用していきます。ただし、免疫抑制剤を服用している場合には、減量・中止をする場合があります。(感染症のリスクを軽減するためです。)

自己負担額

3割負担の方で、点滴1回あたり約7万円となります。単純に計算すると1年間で約56万円となります。
(実際には、高額療養費制度が適用されるので、これよりは負担額は軽くなります。)

禁忌

次の条件にあてはまる人には、レミケードは使用できません。

  1. 重症の感染症にかかっている人(病状が悪化します。)
  2. 結核に現在かかっている人(昔かかったことのある人については、個々に判断します。)
  3. レミケードを使用してアレルギーの出た人、あるいはレミケードのようなマウスを利用して製造された薬剤(通常の人に使うような薬剤では現在はありません。)でアレルギーの出た人
  4. 多発性硬化症の人
  5. うっ血性心不全の人(病状が悪化します。)
  6. 全身性エリテマトーデスを合併している人(当院での方針です。)

使用にあたっての注意

次の条件にあてはまる方には、エンブレルは使用できません。

  1. レミケードを使用すると、結核、敗血症を含めた重症の感染症が起きることがあります。(レミケードを使用すると結核発症の危険率が約8倍になるといわれています。)
  2. 多発性硬化症が発症してくることがあります。
  3. 全身性エリテマトーデスと類似した症状がでることがあります。
  4. 癌の発生率については、まだ使用年数が少なく影響については不明です。(現在のところ、因果関係は指摘されていません。)
  5. 関節リウマチを完治させる薬剤ではありません。
  6. レミケードの使用中はワクチンの接種はおこなわないのが原則です。
  7. 高齢の人では、特に感染症に対する注意が必要です。

使用前の診察

結核のチェック

問診

療養所に長期間入院し、化学療法を受けたことはありませんか?
家族に結核を患った人はいらっしゃいませんか?
結核を患った人との接触はありませんか?
以前におこなったツベルクリン検査の結果はいかがでしたか?
BCGを接種したことはありますか?
10~20歳で肺炎が長引いた、もしくは咳・痰が治らなかった経験はありませんか?
過去に熱が出たことがあり、薬ですぐに治らなかったことはありませんか?
肺浸潤と診断されたことはありませんか?

画像検査とその他

胸部レントゲン検査
ツベルクリン反応
胸部CT検査

結核に関する当院での方針

  1. 年齢に関わらず、現在活動性の結核感染を示唆する所見のある場合 レミケードは使用しません。
  2. 年齢に関わらず、過去の結核感染を示唆するレントゲン・CT所見のある場合 レミケードを使用しないこともあります。 ご本人の希望と全身状態を勘案して、場合によっては抗結核剤の予防投与。
    (イソニアジドをKg体重あたり5mg、1日最大300mg、9~12ヶ月)をしながら、レミケードを使用します。
60歳以下 60歳以上
ツベルクリン反応陰性
  1. 開始前に胸部レントゲンのみをおこないます。
    問題なければレミケードを使用します。
  1. 開始前に胸部レントゲンのみをおこないます。
    問題なければレミケードを使用します。
    開始前に問題がなくても3ヵ月後に胸部CT検査をおこないます。
ツベルクリン反応陽性
  1. 開始前に胸部CT検査をおこないます。
    開始前のCT検査で問題がなくても、3ヵ月後に再びCT検査をおこないます。
    結核発症のリスクがあることを十分に考えていただいた上で、レミケードを使用します。
    抗結核剤の予防投与をおこなうことがあります。
  1. 開始前に胸部CT検査をおこないます。
    開始前のCTで問題がなくても3ヵ月後に再びCT検査をおこないます。
    結核発症のリスクが高いことを十分に考えていただいた上で、レミケードを使用します。
    原則として抗結核剤の予防投与をおこないます。
  1. 結核患者との接触があった場合
    レミケードの中止、あるいは抗結核剤の予防投与をおこないます。

ここまで結核に注意を払うのは、結核菌を殺す働きを持つマクロファージという細胞の働きを、レミケードは抑えてしまうからです。

また、これまでレミケードが使用されてきた国に比べて、日本では、格段に結核の感染者、既感染者が多いからです。

心不全のチェック

日常の動作で動悸・息切れ・胸の痛みがでることはありませんか?
心臓超音波検査
 心臓の動き具合を評価します。
 左室駆出率が35%以下の場合には、レミケードは使用できません。

アレルギー症状のチェック

薬などで皮膚のかゆみや発疹がでたことはありませんか?
アトピー性皮膚炎や、花粉症、気管支喘息といわれたことがありますか?

多発性硬化症についてのチェック

多発性硬化症といわれたことがありませんか?
血のつながりのある方で多発性硬化症の人がいらっしゃいませんか?

全身性エリテマトーデスについてのチェック

紅斑
抗dsDNA抗体

副作用

一般的な副作用(国内臨床試験217例での結果)

発熱(8.3%)、血圧上昇(6.5%)、頭痛(5.5%)、ほてり(5.5%)など

重大な副作用とその対策

  • 敗血症、肺炎、真菌(かび)感染症をふくむ弱毒菌(通常の免疫状態では問題にならない菌)感染症
    診察で早期発見につとめ、疑わしい場合はレミケードを中止します。
  • 結核
    使用後、早い段階で結核を発症してくることがあります。 3回目の点滴ぐらいまでの期間に発症してくることが多いようです。 1ヶ月に1回の胸部レントゲン検査をおこないます。 肺以外の場所に結核がでてくることもあります。
  • 使用時の重篤なアレルギー
    点滴中や、点滴終了後2時間以内に、息が苦しくなったり、血圧が下がったりする(アナフィラキシーといいます)ことがあります。 この反応の発生率は1000分の1といわれています。 当院では、使用時には血管確保をおこない、特に最初の2回は、入院していただき、十分な観察のできる状況で点滴をおこなうこととしています。 上記の反応が発生したときには、速やかにボスミンという薬を皮下注射するなどの処置をおこないます。
  • 全身性エリテマトーデスと類似した症状
    抗DNA抗体が陽性になり、関節や筋肉の痛み、発疹がでることがあります。 重症例の報告はありません。 レミケードを中止します。
  • 白血球数の減少
    レミケードを中止します。

使用中の注意

次のような症状が現れたときは、速やかに主治医に連絡をとってください。

発熱・悪寒・発汗
体のだるさ・疲労感
鼻水
のどの痛み
咳・痰
息切れ
下痢
頻尿・残尿感
手足のしびれ・ピリピリ感

感染症が疑われた場合の当院の対策

  • 結核が疑われた場合
    イスコチン(100mg)3回を開始し、喀痰の核酸増幅検査で確認の後は、転院で(京都府下では結核病棟は限られた施設にしかありません。)治療継続
  • 細菌感染が疑われた場合
    ファーストシン(1~2g)2回 (+イセパシン(400mg)1回 )
  • MRSAが疑われた場合
    バンコマイシン(1g)2回 を追加
  • 非定型的な肺炎が疑われた場合
    バクタ(6g)2回 または デノシン(5mg・kg)2回 を追加
  • 真菌感染が疑われた場合
    ジフルカン(200~400mg)1回 または ファンガード(150mg)1回 を追加

※本稿作成にあたっては、田辺製薬提供のインタビューフォームを参考にさせていただきました。