リウマチ性脊椎症
リウマチ性脊椎症
関節リウマチによる炎症は、脊椎の関節にも生じるため脊椎の支持性や安定性が障害されることがあります。このリウマチ性脊椎症が環軸椎や頚椎に起こり、椎体がずれることにより脊髄を圧迫して四肢の麻痺が生じることがあります。このような場合は、脊椎を整復、除圧、固定する手術を行う必要があります。
リウマチ性環軸関節亜脱臼 35才女性
後頭頚部痛、四肢の痺れ感、筋力低下が徐々に増悪していました。頚椎を前屈すると環椎前弓と軸椎歯突起の間が14mmも開き、著明な脊髄の圧迫を認め突然死の危険性もありました。整復して環軸関節貫通螺子固定術(Magerl法)を行い、良好な整復位と固定性が得られました。術後、神経麻痺症状は改善しました。リウマチ性頚椎症 68才女性
強い四肢麻痺、呼吸麻痺症状を呈していました。画像検査で、環軸関節垂直亜脱臼、環椎後弓および第4頚椎から第7頚椎での強い脊髄圧迫を認めました。環椎後弓切除、第3頚椎から第7頚椎の椎弓形成、頚椎椎弓根スクリューを用いた後頭頚椎固定術を行いました。術後著明な麻痺の改善を認め、歩行器歩行が可能になりました。腰部変性側弯症について
関節リウマチや膠原病では体を支える軸である腰の背骨(腰椎)に障害を生じることがあります。これは病気のために骨,軟骨,筋肉,靭帯などが弱ってくることや,副腎皮質ホルモンをはじめとした薬物療法の副作用が蓄積してくるためと考えられています。骨が弱くなって骨粗鬆症になると、知らないうちに、または転んだ拍子に背骨がつぶれて圧迫骨折と呼ばれる骨折を生じて背骨が変形します。また,圧迫骨折以外の原因では背骨の間にあってクッションの役目をする椎間板が弱ったり背骨の関節が悪くなってくると徐々に背骨が変形します。
背骨の変形のために頑固な腰痛が続きます。痛みが強いと立って体を支えることができない場合もあります。また、背骨の中を通る神経に影響がある場合にはお尻から足にかけて神経のしびれや神経痛を感じます。
下に正常な腰椎のレントゲン写真を示します。正面から見ると背骨がまっすぐに並んでいて、横から見ると、背骨に自然に反っていること(生理的な彎曲)がわかります。
次に、関節リウマチのために生じる腰椎変性側弯症で変形した腰椎のレントゲン写真を示します。正面からみても横から見ても背骨が異常に曲がっています。また、背骨の中を通る神経をMRIで撮影すると、圧迫骨折をおこした骨が神経を圧迫していることがわかります。
この状態では、腰痛とお尻から足にかけての神経痛のために思うように立って歩くことができません。痛みどめや、しびれの飲み薬を飲んでも症状がとれない場合は、手術により曲がった背骨を矯正して固定することが必要になります。 手術により背骨が痛みなく体を支えることができるようになります。
また、同時に神経の圧迫を取り除く処置を行うことで神経痛を取り除きます。
一度背骨が曲がりだすと日常生活動作によって背骨がさらに曲がるように体重がかかりますので、手術はこのような変形の進行を止める効果もあります。
下に示すのは、ユーロサージカル社の純チタン製の脊椎矯正用金属インプラントを用いた脊椎矯正・固定手術の例です。背骨が正常の形に近く矯正されます。前に示した(手術間の写真1)腰椎変性側弯症の方の矯正手術後のレントゲン写真です。下の正常な背骨の形と比べて変形が治って正面からみると背骨まっすぐになり、横から見ると生理的な自然なカーブに治ったことがわかります。
手術の後は1週間以内に歩行できることを目標にリハビリテーションを行います。手術して2~3ヶ月の間に背骨が固まるまでは、用心のためにコルセットをつけます。骨が固まってしまえば、金属インプラントは不要になりますが、問題を起こさないかぎりは金属インプラントは埋め込んだままでほとんど支障ありません。