リウマチ膠原病におけるステロイド療法このページを印刷する - リウマチ膠原病におけるステロイド療法

ステロイド=副腎皮質ホルモン(主に、コルチゾール)とは?

人間の副腎(皮質)からつくられ(分泌)、血液の流れに乗って全身をめぐり色々な働きを及ぼします。
 

働きは

  • 全身の活動性を維持します。・・・・恒常性(ホメオスターシス)
  • 糖質、たんぱく質、脂質やコレステロールの代謝を調節します。
  • ミネラル、血液、精神・神経、心臓や血管、胃腸、ホルモン、骨や皮膚、免疫(抵抗力)の調節をします。

分泌量のリズムは

  • 朝に多く、夜間は少ない(日内変動)。
  • 体内でステロイドが増えてくると、副腎からの分泌がへって、一定の範囲内にとどまります。
  • 身体的・精神的ストレス(事故、急性の病気、手術、不安、興奮など)がかかると、分泌量が増えます。

ステロイドの薬とは?

薬としての作用

抗炎症作用:炎症をしずめる=腫れ、発熱、痛みをおさえます。
免疫抑制作用:免疫をおさえる=免疫(からだにとっての異物を攻撃し破壊する)の働きをおさえ、リウマチや膠原病などの免疫の病気のいきおいをしずめます。
 

どんな時につかうのでしょうか?

炎症や免疫の反応による様々な症状――発熱、関節の腫れ・痛み、皮膚の症状、筋肉の症状、血管や内臓(腎臓・肺など)病変など生じている時につかいます。
 

どのようにつかうのでしょうか?

内服療法:基本的に、病状や検査の結果に応じて、十分な量から始め、徐々にへらすします。特に少量―プレドニンで10ミリグラム以下になれば、さらにゆっくりへらします。

内服ステロイドの種類
薬品名(商品名) 薬理作用の
強さの比較
ミネラル作用 血中半減期 生物活性の半減期
コートリル 強い 70分 8~12時間
プレドニン やや強い 150分 12~36時間
メドロール なし 150分 12~36時間
ケナコルト なし 200分 24~36時間
リンデロン 25 なし 200分 36~54時間
デカドロン 30 なし 200分 36~54時間
作用時間が短い 作用時間中間型 作用時間が長い
コートリル プレドニン・メドロール ケナコルト・リンデロン・デカドロン

錠剤は通常1錠中に成人の副腎からの1日分泌量(コルチゾール:20ミリグラム)に応じた量を含みます。
 

ステロイドの量は?

炎症の症状 少量
内臓の病変 中等量~大量
中等量とは体重の数値を10で割った結果の錠数。あるいは、大量の半分量をいいます。
大量とはキログラム表示した体重の数値を5で割った結果をプレドニン(5ミリグラム)の錠数とします。例えば、体重50キロの場合、10錠。

のみかたは?

主治医の判断によりますが、中等量以上は毎日内服し、少量の場合は一日おきにする場合もあります。

連日分割法
朝・夕食後や毎食後に、朝を多めに配分します。病状のコントロールがしやすいためです。
朝1回法
朝食後にまとめて内服。特に少量の場合(体内のステロイド分泌の日内変動を配慮します。)
隔日法
一日おきに、少量の場合、成長期の子供の場合、病状のコントロールが難しい場合があります。
 

内服以外のステロイドの使用は?

点滴および静注法
のめない時に使用します。
筋肉注射法
感冒や下痢などのときに、臨時にケナコルトAを注射します。(一ヶ月に1回程度)
ターゲット療法
リメタゾンを2週間に1回程度静注します。(炎症部位にとどいて作用する)
パルス療法
大量以上のステロイド治療が必要な場合(中枢神経、肺、腎臓などの病変)、点滴で使用します。
局所的に使用 口腔内投与
口内炎に対してはぬり薬(ケナログやレダコート)、貼り付ける錠剤(アフタッチ)
経皮投与
ファルネゾンやファルネラ-トのぬり薬を、ひじや手首の関節などに塗布します。(みずむしやたむしなどができやすいので、下半身は避けた方がよい)
関節内投与
関節症状が強い時にのみ使用します。(効果は3~4日持続)1~2週間以上の間隔をあけて使用します。
 

ステロイドの副作用

努力次第で最小限におさえることができます!
少量では副作用の発現頻度が著しくへります!
 
  • ふとることがあります
    食欲増進による肥満、食事カロリーをコントロールすることでステロイドをのんでも太らない
  • コレステロールが高くなることがあります(高脂血症)
    食事療法、薬物療法で治療します。
  • 糖尿病になることがあります―特に糖尿病の家系の人は要注意!
    食事療法が重要、薬物療法―内服薬やインスリンで治療します。
  • 血圧が上がることがあります
    塩分制限をして、太らないように気をつけましょう。
  • 骨がもろくなる(骨粗しょう症になる)ことがあります
    特に、せぼね(脊椎)やあばら(肋骨)に起こりやすく、骨折の危険性(閉経後女性に多い)があります。
    脊椎の圧迫骨折は、はげしい痛み(腰痛や背部痛)~無痛性(身長が縮む)をともないます。
    骨密度の測定を半年~1年に一回おこない、骨粗しょう症の予防に努めます。
    予防と治療は
    (1)適度な運動 
    (2)タバコや飲酒をひかえる
    (3)カルシウムの補充
    (4)ビタミンD(アルファロール、ワンアルファ、ロカルトロールなど)の補充
    (5)ビスホスホネート(ダイドロネル、ボナロン、フォサマックなど)の服用
    (6)カルシトニン(エルシトニンなど)の筋肉注射
    (7)女性ホルモンの補充
  • 目の病気―白内障や緑内障になることがあります
    目がかすんだり、目が痛かったり(頭痛として感じることもあります)した時にはまず主治医に相談をしましょう!
  • 胃や十二指腸に潰瘍ができることがあります
    一緒にのんでいる解熱鎮痛剤の方が原因として多く、症状がない場合もあり定期的な検査が必要です。
    潰瘍と診断されても良い胃薬(潰瘍を治し予防する薬)があります。
  • いらいらしやすい、眠りにくいことがあります
    主治医と相談の上、軽い安定剤をのんでも構いません。
  • 汗をかきやすい
    代謝が活発になるため、夏場に多い。
  • からだがむくむことがあります(浮腫)
    ミネラルの異常(ナトリウムが貯まる)。特に腎臓が悪いときに注意しましょう。
  • かぜをひきやすい、こじらせやすい
    白血球の動きやはたらきが弱まります。
  • きずがなおりにくい
    皮膚のケア(保護)について

    ステロイドの長期連用で、皮膚が弱くなり、表面の血管ももろくなりあざ(紫斑)ができやすくなっています。
    衣服に留意(長袖を着用)、家具の配置の工夫などをしましょう。また、けがややけどの時は直ぐに医師に相談しましょう。

他の薬との相互作用の注意

けいれんや結核の治療中の場合、ステロイドの効果が弱まることがあります。
経口避妊薬を内服している場合、ステロイドの効果が強まることがあります。
バファリンの効果がステロイドにより弱まることがあります。

生理的に副腎からのステロイド(コルチゾール)の分泌がへっており、副腎が正常な働きにもどるまでには約1年かかります。